はんぺんについて、東京・日本橋の老舗『神茂(かんも)』の代表取締役・井上卓さんにうかがいました。

『神茂』は今年で創業330年

創業は1688年、現在と同じ場所で生まれた「神茂」。今年で330年、井上さんで18代目になります。もともとは、江戸開府の折に関西から出てきたお店。大坂は神崎川近くだったので、当時の屋号は「神崎屋」でした。

井上さんから遡ること7代前の店主が、茂三郎という名前に改名。「崎屋」の「三郎」ということで、次第に「神茂」と呼ばれるようになったのだとか。

「神茂」、元は日本橋魚市場で魚の売買するお店。あまった魚をつみれなどにしており、そんな中で白いはんぺんも生まれました。はんぺんの元は、大坂の鱧を原料にした食べ物「あんぺい」。この料理の手法が東上して静岡では黒はんぺんになり、江戸では白はんぺんになりました。

はんぺんの作り方

江戸時代から変わらず、はんぺんの原料は鮫。江戸の役人が中国の役人を日本橋魚市場に案内したところ、当時日本では捨てられていた鮫のヒレが中国で売れることがわかった。鮫をたくさんとるようになりましたが、身が食べきれない。そこで余った身で、はんぺんが作られるようになりました。

90センチから100センチの小型のホシザメに加え、ヨシキリザメ、アオザメなど大型の鮫も使います。皮を剥いで三枚におろし、身の血合いを取り除き、身とスジに分けます。身の部分がはんぺんになります。すり身にして石臼で冷やしながら塩を加えて擦ると、だんだん空気を含んで真っ白に膨らんでいきます。ここに卵白などを加えて蒸したら完成です。

はんぺんは、丸い形が主流。おわんにすくって成型したので、半片(はんぺん)と呼ばれるにようになりました。江戸時代は、はんぺんはハレノヒに食べる高級品。武家が贈答用に使う時、丸いとすわりが悪いので四角いものができたんだそうです。

昔の文献を見ると料亭では、はんぺんにウニを塗って焼いたり、薄くそいで何かを巻いて食べたりもしていたよう。 井上さんのオススメは、ミョウガと大葉を刻んだものを乗せて生姜醤油で食べる方法だそうです。

「神茂」では、代表取締役である井上さんも自ら、はんぺんを作ります。自分で魚をすり身にすることで、その日の身の良し悪しがわかる。満足できるものができない時は、店頭に出さないそうです。

ちなみに…ユーモアもある井上さん。イイダコの頭に帽子をかぶったような可愛いおでん種を考案されたそうですので、ぜひお店でチェックしてみてくださいね。

▼公式サイトから通信販売でも購入できます。

日本橋 神茂(かんも)
住所:東京都中央区日本橋室町1-11-8
電話:03-3241-3988

今週の熊八レシピは「おでん」

おでんの大根のおいしい煮方

  1. おいしいおでんの大根は下準備で決まります。5センチくらいの輪切りにした大根の皮を包丁でむいて、面取りしておきます。ピラーより包丁で桂剥きのようにしたほうが煮崩れにくくなります。
  2. 米のとぎ汁(なければ水に生米を入れたもの)を軽く沸騰させて大根を入れ、大根にすっと竹串が通るくらいに下ゆでします。
  3. 一度大根を水にとって冷やします。冷やすと大根が透き通ります。
  4. 煮汁に入れて一煮立ちしたら、火をとめて冷まします。1時間ほどすると大根に味が染み込みます。

おでんの卵

  1. 半熟より少し固めのゆで卵を作ります。
  2. 殻をむいておでんの煮汁に入れ、2、30分煮込みます。
  3. 煮上がったら一度火を止め、蓋をして冷ますと味が染み込みます。
  4. 食べる時にもう一度あたためてどうぞ。
  5. 白いごはんの上におでんの卵をのせ、半分に割ってからしをつけ、おでんのつゆをかけるのもオススメです。

おでんのさつま揚げ

おでんに欠かせない具、さつま揚げ。おでんのうまさには「油」のうまさが不可欠なんです。魚のすり身から出る味、甘めの塩味、油の味がだしに溶け込んで、おでんの味わいを作り出しています。